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建築学科・今村研が出展
ひろしま国際建築祭2025「Nine Visions」展に模型作品を提供

 

 2025年10月に開幕した「ひろしま国際建築祭2025」の主要企画展「Nine Visions—建築家からの9つの提案」(10/4〜11/30会期)に、建築学科・今村創平教授の研究室が制作した建築模型が出展され、大きな注目を集めた。
 
 本展は、戦後の広島の再生と、これからの都市のあり方を国際的視点から再考することを目的に初めて開催された建築祭で、世界的に活躍する建築家や研究組織が参加。会場には建築家による新作提案だけでなく、20世紀後半を代表する名建築の資料展示も並び、建築史と未来像を同時に体感できる構成となっている。
 
 今村研究室は、本展のうち「磯崎 新」「槇 文彦」のパートの展示に協力し、とくに槇文彦の代表作〈ヒルサイドテラス〉の模型(2025年制作)を提供。精密なディテールと空間構成の理解に基づく模型は、多くの来場者の視線を集めた。
 
 〈ヒルサイドテラス〉は1967年から継続的に増築されてきた複合施設で、戦後日本の都市デザインの象徴とされる作品。今村研究室では、槇文彦の書籍から建築家の思想を学び、〈ヒルサイドテラス〉の設計意図を分析した。また槇事務所から提供されたCADデータや現地調査に基づき、周辺環境も含む3次元データを作成した。そのうえで、各期の建物の特性を読み解いた上で、都市空間全体を示す模型として再構築した。素材はスチレンボードやアクリルなどを用い、敷地の起伏や街路のスケール感にもこだわり、建築と都市の連続性を可視化している。
 
 ほかにも今村研では、〈ヒルサイドテラス〉のドローイングや説明を担当し、それらは壁面に展示された。また、磯崎新の展示においては、今村は展示品の選択にかかわり、研究室の学生は各作品の解説などを手掛けた。
 
 こうした磯崎新と槇文彦の展示パートについては、今村教授がギャラリー「ときの忘れもの」に連載中のエッセイ(2025年10月29日掲載)にて、本展の準備過程や両建築家の位置づけについて述べている。この文章は展示紹介としても位置づけられ、関係者の間でも評価をされた。
 
 本展には、千葉工業大学をはじめ、京都大学大学院工学研究科建築学専攻・建築史学ダニエル研究室、京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab、マルニ木工、アイティーエルなど、国内外の複数の教育研究機関・企業が特別協力として参加。今村研究室は、模型制作と学術的協力の双方の観点から、展示全体に大きく寄与することとなった。

 模型制作には学部生・大学院生が多数参加し、資料調査、図面整理、分担制作、仕上げ調整まで1年にわたる作業を実施。(制作チームは「建築史的文脈を正確に理解した上で、展示に耐えうる模型をつくるという経験は極めて貴重だった」と語っている)


【参加学生】

修士2年:坂内俊太、猪股楓、川上拳汰、沓掛涼太、副島碧、平瀬美咲
修士1年:飯塚真尋、石井美沙、奥富樹、佐藤祐莉彩、藤本千廣
学部4年:徳富皐、浅見明優美、磯貝凪沙、乾美優、大池颯馬、荻野大河、金子雅史、櫻井朋哉、菅原詩那、鈴木真優、広瀬真妃奈、山岡智哉
 

【研究室メンバーの感想】

 

飯塚真尋さん
模型では、建てられた時期により異なる建物のスケール感と素材を、丁寧に表現し作成しました。最終的な組み立てのために、尾道の美術館に行きました。視線の交わりや人々の動きを意識して模型に人の添景を入れ、ヒルサイドテラスが街や人にどのような影響をもたらしているのか、見てくださる方々に伝わるようにしました。

石井美沙さん
実際にヒルサイドテラスを訪れて素材やディテールを観察し、3Dデータの製作から、模型の構成や制作方法についても自分たちで検討を重ねました。どのような表現が槇さんの思想をもっとも的確に伝えられるのか試行錯誤を繰り返し、現在の模型にたどり着きました。

今村教授
これまでの今村研では、展覧会での模型製作を何度か行ってきましたが、模型表現の検討、スケジュール管理、役割分担、予算検討、製作手順などを学生に任せ、私は適宜助言をすることとしています。そのグループワークによって、研究室のスキルが共有。継承され、また結びつきが強くなります。今回の模型はこれまでに手掛けたものの中で、最大規模のものでした。これだけのことを研究室として達成できたことにとても満足しています。